「続・蝕み」

甘いものに縁がない野良たぬきを釣るのは容易だった。
チビたぬきは、どんな早さで虫歯になるのだろう。
想像して、これまでと違う笑みを作るのを止めることが出来なかった。
もはや男は、自分の代わりに甘いものを美味しそうに頬ばるたぬきの姿よりも、二度と自分の好きなものを食べられないと知った時のあの絶望した姿が見たくてたまらなくなっていた。


ゴミ捨て場で食べられる物を探してションボリしていた親子と出会った。
幸いな事に3匹のチビ達と親の絆は深く、チビ達が飢えて手やしっぽに自分の歯形がついていても関係性は悪くないようだった。
皿の上に山のように盛ってやった、果汁で出来たグミを前にしても、
「チビ…好きなものを食べるし…いっぱいあるから慌てないで食べるし…」
「ｷｭｷｭｰｳ！チビはこれにするしー！」
「ｷｭｳｳﾝ！たのしいし！うれしいし！ﾓｷｭｯ！」
「まま、これおいしいし！あーん、し♪」
「ふふ…ありがとし…」

「これもあげるし！まま食べてしー！」
「ｷｭｳｷｭｳ♪おいしー♪」
「つぎはこれにするしぃ〜♪ｷｭｳﾝ♪」
「チビ達楽しそうだし…飼い主さんいつもありがとうだし…」

こちらを信用しきった親たぬきは、まずチビ達に好きな物を選ばせてやり、
チビ達は幸せそうに自分の頬をモチモチと持ち上げながらも、親と一緒に仲良く分けている。
これが欲深い親なら毒味と称してほとんどを自分で食べてしまったりする所だ。
「この“ぐみ”ってやつ美味しいし…歯応えいいし…」
「くだもののカタチがかわいいし！ｷｭｳﾝ♪」
「ｷｭｷｭ…みかんのヤツすきだし…」
「ｷｭﾇｰｷｭ…ぶどうし…」
甘いものに囲まれた幸せな生活ですくすく育ったチビ達は、あれが好きこれが好きと俺や親にアピールするために言葉を覚えるのが早かった。
ーーー以前なら、この光景だけでお腹いっぱいだっただろうな。

串団子やシュークリームなどの柔らかな甘味は与えない。歯がなくても食べられてしまうからだ。
歯が無くなれば甘いものを食べられなくなると言う絶望がエッセンスになるのだから、柔らかくて甘いものは避けるようにしていた。

そして、ぷくぷくと太りながらも甘い汁を啜る生活を数ヶ月続けた結果。
親は前のやつと同じように全ての歯を、
特にチビたぬきは野良生活の栄養不足により元々少なかった歯を、全て虫歯にしてしまった。
咀嚼するたびに歯を失い、痛みを訴えるたぬき親子に“この苦しみから解放される方法があるよ”と歯科に連れ出す事にした。
たぬき親子は「ありがたいし…！」と涙と鼻水まみれで喜んだ。
嘘は言っていない。


たぬきは生まれた時から永久歯らしく、人間の子供のように成長と共に生え変わる事はない。
次第に生えていった歯が抜けたらそれっきりらしい。
全ての虫歯を抜く施術の終了後、歯科医に説明を受け、今度はたぬき親子も同席させていた。
このチビ達は賢い方ではあったが、歯科医の説明は難しくてわからなかったらしく、眉間に皺を寄せながら片方の手をもう片方の手でモチモチさせるばかりだ。
お前達はもう“ここ”が無いから、と俺は自分の歯をむき出しにして指す。
今までみたいな甘いものばかりの生活は出来ないよ、と言い換えてやる。
「ｷｭｯ……！？」
「もふ、“ぐみ”たれられなひし…！？」
「れんふ、ぬいひゃたし…」
チビ達は信じられないといった顔を見合わせる。
“もう、グミ食べられないし！？”や、
“全部、抜いちゃったし”と言いたいのが上手く言えなくなるあたり、それ程のショックで、また歯がない事で発音も難しくなっているようだ。
「歯みがき…そんな文化があったのかし…今度から気をつけるし…」
親は現実逃避をするように、子供達の様子にも気づかず“今後他のたぬきを飼うのなら、歯磨きはしっかりやってください”という俺に向けた歯科医の説明に耳を傾けていた。
こいつらは全部抜いてもらった後の話なので、気をつけようがなかった。


手術自体の疲れもあったと思うが、たぬき親子は行きとはまた違った様子で憔悴しきっていた。
表情もションボリを通り越してドンヨリといった暗さだった。
全ての歯を無くし、噛み締める事が出来ないので歩行もどこかフラフラと落ち着きがない。
その様子を見るのが楽しいので、わざと歩みを遅くして歯無したぬき親子を先行させた。
「ｷｭｳ…ｷｭｰｷｭ…」
「もう、たれれなひ…し…ｷｭｷｭ…」
「たろひくないひ…」
「チビ達、元気出すし…」
こいつら、せっかく喋れるようになっていたのに。
発声がうまくいかず、口内の違和感にもごもごするしかないチビ達は、あからさまに口数が少ない。
だって行く前は、
“いたくなくなったら、チョコ食べたいし！”
“チビはハイチュー！がいいし！”
“あっそれいいし！おわったらたのしみだしぃ！”
とか痛くなくなった後の希望を語り合ってたんだもんな。
それがまさか、もう甘いものが食べられなくなるなんて夢にも思わなかっただろう。
俺は知ってたけど。
絶望して喋れなくなった後、前を歩かせていた1匹のちびたぬきが歩みを止めた。
思い詰めた表情で、ぶるぶると震えながら川を見つめている。
「ｷｭ…ｯｷｭ…ｷﾞｭﾜｧｧｰｰｰ‼︎」
チビたぬきは叫び狂いながら、川に頭から飛び込んだ。
あっという間の出来事だった。
この時期は熱気で水が蒸発して少なく、ほぼ地面だ。
流石のモチモチボディも頭から激突し、自重で首を折り、潰してしまえば楽になれる。
将来を悲観しての行動は、次のリポップ先に賭けるということか。
まだ生まれて数ヶ月ながら、自らの手で陰惨なたぬ生に幕を引くとは罪深い話だ。
ある意味では賢明かもしれないが、
果たして来世も好きにモノを食べられるたぬきかな？ 
川底を覗き込み、頭を割って血を流しピクピク震える遺体を確認していると。
「ｷﾞｭ…ｷﾞｭｳ…ｷｭｳｳｳｳ！」
「やらひっ…やらひぃ…」
再び、川に向かって飛び出す影が2つ。
他のちびたぬき達も、後追い自殺を始めたのだった。
死の恐怖より、先を嘆いての決断力が勝ったということか。
止めるつもりは元々なかったが、あっという間の出来事に少々、呆気に取られる。
まあこいつらはこれからが楽しかったはずなのに、この先一生好きな物を食べられませんって言われたら死刑宣告に等しいよな。
「あ…？れれ…？チビ…どこいったし…チビ…なんでし…？」
あまりにスピーディーな我が子らの集団自殺に、呆然とへたり込んだ親たぬきだけが残された。
その夜。
孤独となった親たぬきは歯がないのに無理やり甘い物を喉に詰まらせて死んだ。
詰まったけど詰まらん死に方だった。
次の親子を探しに行こう。


「チビぃ…どこだし…何も見えないし…」
「ｷｭｩｩｰ…まま、チビたちはここだし…」
「あっ…あぶないし…まま…しっかりしてし…ｯｷｭ…」
虫歯よりも先に糖尿病による緑内障を発症した親たぬき。
2匹のチビたぬきが、視力を失った親の介護をしていた。
「チビ達のかわいい顔が見れなくなっちゃったし…」
「ｷｭｰ…ままかわいそうだし…」
「わたしたちがついてるし…ｷｭｳﾝ」
まだまだ遊びたい盛りなのに、日がな親の介護に付き合わされているチビ達が憐れで愛おしかった。
「ほら、これをママに持っていってあげなさい」
「ｸｩﾝ…ありがとし…かいぬしさん…」
「先にままに食べさせてあげるし…ｷｭｯｷｭ」
と、お菓子を渡せばいつも自分達の分は後回しにして親に食べさせてあげる健気なチビ達だった。
「まま…これ、かいぬしさんがくれたし…」
「いっしょに食べようし…ｷｭ~」
チビたぬき達が、手渡されたコンペイトウを親のほっぺにすりすりと当てがう。
猫背のままで足を伸ばし、床にぺたんと座り込んだ親たぬきは触感で形を味わったあと、甘い匂いに安心して口を開けた。
チビ達が慎重に、親の口内にコンペイトウを運ぶ。
糖分の塊を、じゃりじゃりと噛み砕く音が聞こえた。
「あまいし…チビと、この甘いお菓子のおかげで生きてられるし…」
涙を垂れ流すことしか出来なくなった目を拭い、親たぬきがしみじみと語る。
いや、甘いお菓子がこの状況を作り出してるよ。男は笑いを噛み締めて、目の前の喜劇を楽しんだ。

何故こうなったのか、どのたぬき達にもわからない。
むしろ身体がおかしくなるほどに、拠り所としてこちらにいっそう依存してくるようになる。
こちらとしても悲惨な最期が見たいから、見捨てることは絶対にしない。
自分もまた、つくづく何かに依存しなければ生きていけない性格なんだと思い知らされた。
でも、やめられない。
自分を慕っていたこの可愛い生き物達が、絶望にまみれて死んでいく末路を辿るのが、どんな娯楽よりも楽しい。
やめられない、止まらない！



結局この介護チビ達は親をリビングに置いたトイレに連れて行ってから戻る際、
親の肥満体を支えきれず、転倒した親に押し潰されて亡くなった。
親たぬきは我が子の死骸を下敷きにして、うつ伏せで身体を反らせてジタバタした後、一向に支えてもらえない事を不思議そうに呻く。
「チビ…どしたし…？見えないからわからないし…」
潰れた肉の感触や、血に濡れた自分の身体に気がつかないものなのか？
それとも、わかっているけど受け入れられないのか。
どっちでもいいか。
本当にわからないのなら、教えてやらなきゃ。
「残念だけど…お前を支えようとして、支えきれずに潰れてしまったみたいだ…」
「えっ…！？チビ達、大丈夫かし…！？」
「ダメだ、もう死んでる」
「そんな…あんなに親思いの子達が…たぬきの目がわるいし…！何で見えなくなっちゃったんだし…！」
「お前は悪くない。不幸な事故だったよ」
「やだし…やだしぃぃ…」
子を失った失明たぬきはその晩、何の希望もない真っ暗闇の中で絶望し、ジタバタもがいて動かなくなった。
これはまぁまぁの最期だったな。次を探そう。



「見てし見てし…！たぬきのうどんダンス…！」
適当に流し見をしながら、お盆に乗せたジュースと、たっぷり皿に盛った“しるこサンド”を置いてやる。
「ふぅ、し…疲れたら甘いものがいちばんだし…！」
固いビスケットをばりばり砕きながら、冷たいジュースで流し込む。
至福の表情のたぬきに、ションボリな様子はカケラも見当たらない。
うどんダンスが大好きで、起きてる間は甘い物を食べるか踊るかのどちらか、というぐらいのたぬきだった。
子供にもその生活を強いた結果、甘いものばかりの生活で却って疲れやすく、生育不良を起こしたチビたぬき達はもうとっくに死んでしまっていた。


こいつは、1匹きりになってもこれまでの生活をやめなかったが、
糖尿病が進行して血液の循環がうまくいかなくなり、片足を壊死させてしまった。
切断しなきゃならないと説得するフリだけしてみたが、
「やだし…たぬきは踊れなくなるの、ぜったい、やだし…！」
イヤイヤと首を振るばかりで現実逃避をしていたが、それでも尚踊ろうとするたぬきの右足が先にもげてしまった。
ひとまず出血を止め、包帯をぐるぐる巻にしておいたが、片足だけでは移動もままならない。
踊れなくなったショックで食欲も無くし、
ﾀﾇｩ…ﾀﾇｩ…と鳴くことしか出来なくなったが
片足がないままバランスの悪いジタバタをして、やがて動かなくなった。
虫歯だけじゃなく、こういう事も起きるのか。今後の参考にしておこう。



「あれれ…？どうしてしっぽないし…？これじゃ立てないし…」
糖尿病によってしっぽが腐るという、たぬきならではのケースだった。
切除しなければ死んでしまうと言われ、たぬきの同意は特に得ずに手術をしてもらった。
麻酔で痛みもなかったのでたぬきはしばらくしっぽが無くなったのも気がつかなかったらしい。
親だけ手術のために連れ出して、麻酔が効いているうちに持ち運び用ケージで連れ帰ってきた。
家に帰って麻酔が切れてから、今更のように騒ぎ出した。
目が覚めて、起き上がれない事で気がついたらしい。


たぬきの生態には詳しくなかったが、
ションボリと前屈みで歩くたぬきにとって、引きずるほど大きなしっぽは、前後の釣り合いを取ることで二足歩行を成立させる、
いわゆるバランサーのような器官でもあったことを知る。
転がったり四足歩行なら出来るはずだが、そこはたぬきのちんけなプライドが許さないらしい。
というか、しっぽを失ったショックで気づいていないのか？
たぬきはメソメソ泣いて動けない。
これはまた介護パターンかな？
この形だと圧死は望め無さそうだなとガッカリしていたら、驚くべきことが起きた。
3匹いるチビ達のうち2匹が親たぬきに同情して、お互いに自分達のしっぽをちぎりだしたのだ。


「ほんとにやるし…？こわいし…ｷｭｳﾝ…」
「ｷｭｰｷｭ…ﾏﾏﾉﾀﾒﾀﾞｼ…」
「わかったし…やるし…ままのためなら、こわくないしぃぃ…！」
片方のチビたぬきが体重をかけてしっぽを抑え、抑えられたチビたぬきが自ら前に進み、ブチブチと嫌な音をさせた。
通常であれば、いくらチビでもちぎれる事はないはずだが、糖尿病で血液の循環が悪化して半ば壊死した状態だったからだろうか。
役割を交代し、もう一度同じ事を行うと、しっぽを抱えた残る1匹のチビが渋る。
「やだし…チビはしっぽとりたくないしぃ…！」
「ままひとり、しっぽナシじゃかわいそだし…」
「ｷｭｰｷｭ…ｳｺﾞｲﾁｬﾀﾞﾒｼ…」
「やだし…やだし…ゆるしてｷｭｷｭｳｳ…！」
イヤイヤと怯えながら首を振る姉妹には1匹のチビが無理矢理抑えつけている間に、もう片方のチビが強引にひきちぎる。
被害に遭ったチビは自分のしっぽが大好きで、お昼寝でも遊ぶ時でもしっぽを抱きしめてしゃぶるようなチビだったはず。
姉妹の癖は知ってるはずなのに、親のために巻き込むのか。
たぬきの世界にも同調圧力ってあるんだ。怖…。
　

「いたいし…いたいしぃぃ…！ｷｭﾜｧｧｧｱﾝ！」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ
「ｷｭｷｭ…ｷｭｩｩ…ｷｭｷｭｳｳ…」
「まま…これでおそろいだし…だから泣かないで…ｷｭｳﾝ…」
親のあの悲惨な姿を見て、出来ることはこれか。
感動を覚えると共に、無知ゆえのおそろしさを感じた。
お尻の先から血を滴らせ、痛みを我慢できずに泣くものの、
仰向けの親にぽんぽん、と手を当ててやり気遣う姿は何ともいじらしいが。
強引にちぎられた1匹だけが天を仰いでジタバタしながら泣き叫んでいる。
だが、唐突にコテンと転び、ジタバタする2匹のチビたぬき。
ひとしきりジタバタし終えて、自分達も立ち上がれない事に気づく。
「ｱﾚ…なんでし…？」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ
「ｲﾀｲｼ…ｼｯﾎﾟﾅｲｼ…ｲﾀｲｼｨ…」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ
また、1匹で泣いていたやつも泣き疲れて起きあがろうとして不可能な事を訝しんだ。
「ｷｭﾜ…たてなくなったし…？」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ


「あああ…チビたちまで…たてないし…しっぽないし…いたいしぃ…」ｼﾞﾀ…ﾊﾞﾀ…
壊れたレコーダーのように、いたいし…たてないし…しっぽないし…と、スローモーションでジタバタしながらうわ言を繰り返すたぬきに、
「なぁたぬき。しっぽってもう生えてこないの？」
わざとらしく、確認してみる。
「生えないし…だからたぬき達ずっと立てないし…いたいしぃ…！」ｼﾞﾀ…ﾊﾞﾀ…
仰向けのまま、涙がこめかみへと流れていく。親の発言で、自分達の軽率さに初めて気がついたらしいチビたぬき達は、力なくジタバタし始めた。
「ｴｯ…ﾓｳﾀﾃﾅｲｼ…？ﾔﾀﾞｼ…ﾔﾀﾞｼ…」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ…
「ｷｭｩｩｰ…やだって言ったのに…しっぽ返してし…ｷﾞｭｳｳ！」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ…
「ままのためやったし…まま、ゆるしてし…」ｼﾞﾀ…ﾊﾞﾀ…
「うちの子ばかだし…しっぽないし…たてないし…」
健気なチビ達に対して、親の言葉はあまりに報われなさすぎる。
笑いを堪えて、親子でジタバタする様を眺めていた。

結局、一家全員で動けなくなったしっぽ無したぬき達全員に、砂糖水をスポイトで垂らして飲ませてやる。
「ありがとうし…しっぽないし…たてないし…」
もはやジタバタする気力もないのか、仰向けに気をつけの姿勢で倒れたままのしっぽ無し親たぬきが涙ながらに礼を言う。
感謝するのはこちらの方だ。
こんな愛の形まで見られるとは思わなかった。
「ｷｭｳﾝ…ｵｲｼｲｼ…ﾓｯﾄｸﾚｼ…」
「ｷｭｳ…ちびのしっぽ…ｷｭｩｩｰ…」
「ｷｭｷﾞｭｯｷﾞｭ…うるさいし…ままとおそろいだし…がまんするし…」
しっぽの喪失感と四六時中お尻の痛みに苛まれているはずだが、しっぽを失ったチビ達のその後は三たぬ三様だった。
ころころと転がって遊ぶやつ。
抱きしめるしっぽを失い、手をすかしながら嘆くやつ。
嘆くやつに怒るやつ。
だが、どのチビも等しく未来が無い。
追って、歯も全てダメになり、甘いものが食べられなくなった。
立てなくなったことで自由に動き回れず、大好きなうどんダンスも踊れない。
たぬき親子は、もはや生きている意味を見出せなくなって。
結局、自らしっぽをちぎって立てなくなった、しっぽ無しチビたぬき達は色褪せた天井しか景色を知らぬまま、親より先に短いたぬ生を終えた。
しっぽを強引にちぎられたチビなどは、ちぎられたしっぽを後生大事に抱え続けていた。
そして、しっぽ無し親たぬきも子供達の後を追うように、衰弱して死んだ。

最期までずっとメソメソしながら、
「いたいし…たてないし…しっぽないし…」
と、泣きながら呟くだけのたぬ生だった。

どんな末路を迎えようと、ほとんどのたぬきがジタバタするしか無くなって死ぬ。
やはりストレスが原因だろうか。


たぬき、なんて罪な生き物なんだ。
二度と甘いものが食べられなくなっても、たぬきがいれば何もいらない！
さあ、次を探そう！！

男は今日も声をかけ続ける。
たぬきはいつまで経ってもいなくならない。
看取ってから新たなたぬきを探しに外に出れば、またいつの間にか増えている。

「ねぇ君たち。うちに来ない？甘いものがいっぱいあるよ」
「えっ…たぬき達行っていいし…！？」
「もちろん。たぬきがたくさん食べるのを見るのが好きなんだ」
「ｷｭｷｭｷｭｳｰ！」
「まま、ちび達いきたいし！」
「へぇーそうなんだし！いい心がけだし！じゃあお世話になってあげるし！」
「ｷｭｷｭｳ~ﾝ…♪ｽﾘｽﾘ…」
「おなかすいたし！つれてってし！ｷｭｷｭ！」
「あぁ。よろしく…」

皆様も、依存症にはご注意をーーー。

オワリ